金田コーポレーションは近年創業70周年を迎え、製鉄所やエネルギープラント向けに設計、製作、組み立て、運搬、据付工事までのトータルサポートで大型設備の供給をしています。中国大連にある合弁会社で売上の7割を製作し、日本で組立、検品し納品します。岡山本社は大臣認定工場(Mグレード)として品質は自負しています。
工業岸壁が近い立地から、海上輸送での納品も可能です。
昨年特定建設業を取得し、今後は既存事業の拡大に加えて、バイオマス建設の全国展開を目指し、バイオマス関連部品を開発など高付加価値へのチャレンジも視野に入れています。
【事業の現在】
海外工場を活用し、品質とコスト・納期のバランスを保つ。
玉野市・宇野港の北に位置する田井地区。国際貨物の通関も受けられる田井の岸壁から200mの位置に、金田コーポレーションの工場がある。
同社が製作するのは、製鉄所・発電所用の大型タンクや架台、パーツなど。小さな製品でも数m、時には数十mにも及ぶ大型製品を手がける同社にとって、国際港への距離の近さは強みになる。
「当社は案件の7割を、中国の合弁会社・協力会社で製作します。中国で巨大な構造物・建築物を造り、船で日本まで運び、組立・検査を行う。そして国内のお客様へは、陸海の物流を使い分けて納品するのです。海外生産と国内マザー工場とのスキームによって、品質・コスト・納期をバランスよく保つことができています」
と代表取締役社長・畑島美緒氏は胸を張る。
中国には自社の社員を常駐させ、製造品質を担保する。また設計から製作、組立、運搬、据付まで一貫して行う体制を整え、様々なニーズに柔軟に対応する。加えて同社は、鉄骨製作における国土交通省認定のMグレードを取得している。これは建築鉄骨の品質(特に溶接)を評価するもので、6階以上の中高層建築にも携われる技術力を示す。Mでないと大型製品を造れないわけではないが、顧客の安心感につながっていることは間違いない。
【将来の方向性】
鉄骨構造物製作のノウハウ+3D計測付加価値を加え、老朽化更新そしてエネルギー分野に
既存事業をさらに深化させようと、同社は「老朽製品の更新」にも着目する。製鉄所やプラントの各パーツが老朽化すると補修・交換が必要になるが、図面は何十年も前のもので読み取りにくいケースが多々ある。過酷な環境の中でパーツは変形するため、過去の図面通りに製作しても、新パーツと旧パーツの接合がうまくいかなかったりする。
そこで同社は、3Dスキャナを使って現地でパーツを計測。そうしたデータを図面に落とし込み、現場の状況に合った効率的な更新を行う技術を確立した。これを基にしたパーツの更新提案を普及させたいと考えている。
また、特定建設業の許可を取得し、和歌山でバイオマス建屋建設中である。サイロなどの大物製作にも対応できるよう、新たに40mmまで曲げられるベンディングマシンや6Mまで対応可能なプレス、型鋼曲機を導入しました。これらをお客様への提案活動していきたい。エネルギー分野は今後も着実な成長が見込めるので、しっかりニーズを取り込んでいきたいですね」
【働き方改革】
“会社のため”ではなく“社員自身の人生のため”に、環境を整備。
社員が楽しく働けるよう環境を整えることにも積極的だ。
その一つがIT化。製造現場では、パソコンを使えない人が珍しくない。そこで同社ではリーダークラス以上にパソコンを貸し出し、職級が上がる際、パワーポイントで自分の仕事目標をまとめてプレゼンさせるなど、ITに触れる機会を作っている。
従業員との面談にも力を入れている。年2回、一般の職員からリーダー・部課長クラスまで、一人ひとりと向き合って話を深める。以前は、従業員が遠慮してモノを言わないような雰囲気もあったが、「役職のない一般社員の声こそ大事にしたい」という社長の姿勢が浸透したおかげか、気軽に声をかけあう風土が醸成されつつある。
また若手教育・技術伝承のため、シニア技術者を活用する体制を整えた。製造技術に一人、生産管理に一人、シニアを配置。現場で発生する問題について若手にアドバイスをし、現場の改善プランを考え若手とともに実践してもらっている。
「現場の若手が“勉強になる”と頼ってくれています。知見を活かし、理論立てて原因追求やプラン策定を突き詰める姿勢は、若手の刺激になるでしょう。今後は新たに営業職にも、シニアを採用し力を奮ってもらいたいと考えています」
他にも、僧侶によるメンタルケアも用意するなど、できることは何でも取り入れる。総務部で営業サポートに従事する原田有美氏は、
「子どもが体調を崩した時、社長も職場の同僚も“遠慮なく休みなさい”と言ってくれます。社長自身が子育て経験者だから、お互いにカバーし合う雰囲気が自然と生まれているんです。お坊さんと話すメンタルヘルスケアも楽しいですよ。自分を見つめ直すきっかけになっています」
と笑う。
“社員自身の人生”のため、成長できる環境を用意したい。そうすれば会社の成長はついてくる、と畑島氏は確信する。