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製砂機で培った粉砕技術をメディアシュレッダーに転用。 オンリーワン製品で海外進出を図る。  -晃立工業-

晃立工業株式会社

常務取締役 福廣 早代 氏

【事業の現在】
“岩を砂状に粉砕する”技術で、
記録メディアを復元不可の2mm以下に完全粉砕

個人情報や機密情報を含む自治体の行政文書を保存したハードディスクが転売され、情報が流出した事件は記憶に新しい。今や個人情報をはじめとした情報の取り扱いは、官民問わず重要なテーマになっている。こうした情勢の中、注目を集めているのが、同社が開発したメディアシュレッダー「マイティセキュリティー」だ。
常務取締役・福廣早代氏は語る。
「一般的なシュレッダーはメディアを切断する細断方式を採用していますが、マイティセキュリティーは高速回転するハンマーで対象物を粉々にする粉砕方式を採用し、メディアによっては2mm以下の砂状にまで物理破壊することができます。ここまで小さく粉砕すれば、もう復元はできません」
2mm以下というのは、グローバルスタンダードとして参照されているデータ消去ガイドラインにも適合しており、そこまで粉砕できるメディアシュレッダーは他に類を見ない、まさにオンリーワンの製品だ。
同社はもともと、岩を粉砕しコンクリート原料となる砂を生成する製砂機のメーカーとしてトップシェアを占めてきた。マイティセキュリティーはその技術をベースに開発した製品だ。
「前職で情報セキュリティに携わっていた現社長が、実際にメディアデータ消去のニーズとその難しさを身をもって体験したことが開発のきっかけ。国内では道路・橋梁などインフラ建設が下火になってコンクリート需要が減り、当社としても新規事業の開拓が急務でした。全く畑違いの分野でしたが試行錯誤を重ね、2006年に初号機の発売にこぎつけました」
以来、製品の改善を重ね、現在では製砂機と並ぶ事業の柱に成長している。

【将来の方向性】
貴金属の効率的回収も可能。
外資系企業からも注目を集める

従来からの主力事業である製砂機は、インフラ開発の進むインドやモンゴルなど海外ニーズが高く、既に現地パートナーを通じ拡販している。一方でマイティセキュリティーは現在、国や自治体、機密性の高い情報を扱う民間企業など国内顧客が中心。しかしハンマークラッシャータイプのメディアシュレッダーは世界的にみても希少で、外資系企業から注目を集めるなど、海外でも戦えるポテンシャルを秘める。
「メディアには様々な素材が使われていますが、中には貴金属が含まれているケースもあります。マイティセキュリティーは、メディアを粉々にしつつ素材ごとに分離しやすくする効果があるため、貴金属リサイクルにも役立つということも評価していただいている点です。これらの強みを活かし、今後は海外進出も視野に入れています。そのためにも、もっと進歩しないと。メディアは多様化・小型化が進んでいますから、研究が欠かせません」
同社はメーカーとしてメディアシュレッダーを提供するだけでなく、自らデータ消去サービスも手掛ける。ユーザーの立場でシュレッダーの使い勝手を体験し、製品のレベルアップにつなげるためだ。
「質の高い製品を生み出し続けるには、長年培ってきた技術を共有し、若手に継承しないといけません。私たちは次世代を見据え、社内コミュニケーションの活性化などを通じ、全従業員の連携を強めることに取り組んでいます」

メディアシュレッダー【マイセキュリティー】。これはラインナップのうち最も小型の機種で、オフィスなどに置いての使用を想定している。
投入口からメディアを入れ、スイッチを入れるだけ。メディアのサイズによって粉砕時間は異なるが、この程度の大きさなら1~2分で粉砕してしまう。

【将来の方向性】
社員の一体感を醸成。技術伝承や
長期休暇取得もできる環境づくりを

その一つがフィロソフィーの浸透だ。これは企業の目指す方向を定め、そこに進むにはどのような考え方・判断基準が必要か、をシンプルな言葉に落とし込んだもの。社員の行動哲学とも言える。フィロソフィーは全部で約60項目あり、毎日の朝礼で1項目を全員で読み上げ、指名された社員がそれに対する考えを述べる。
「“嘘をつかない”“悪口を言わない”などどれも当たり前の内容ばかりですが、声に出して読み上げることで、自身を見つめ直す時間が生まれます。また意見交換を通じ、普段寡黙な社員が実は熱い内面を持っていたり…と発見も多いですね。始めて1年ですが、従業員の距離感が縮まってきました」
フィロソフィーに基づく環境整備にも力を入れる。例えば「捨てるデー」の実施。毎月2回、事業所内にある使用していないものを徹底的に整理するのだ。
「ものが減れば、必要なものの所在がわかりやすくなる。それによって作業効率が上がれば利益が生まれ、給与や将来の開発費として還元される。環境整備は自分たちのためでもある、と従業員も気づいてくれています」
今後は長期休暇の導入を目指す同社。そのためには取得しやすい環境づくりや業務の引継ぎ体制の確立が欠かせない。
「実は3年前、ある女性社員が育児休暇を経て復職してくれました。結婚や出産で退職する女性社員をずっと見送ってきたので、彼女に“出産後は復職したい”と言われたときは感激しました」
彼女のように、みんなが誇りをもって長く働ける職場を作りたい。福廣氏は、そのために様々な改善・改革を惜しまない。

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