【事業の現在】
1日に対応できる切削工具数は
5000本。国内トップクラスの規模
機械加工を行う上で、切削工具は重要な役割を担う。エンドミルやドリルといった適切な工具があって初めて、高精度で複雑な加工が可能になる。
そうした切削工具を提供しているのがグリーンツールだ。同社の特徴は、顧客の作業に合った工具をオーダーメイドで提供できる点にある。
「ゼロから新規開発はもちろん、お客様が既に使用している切削工具を“再生”させる提案も行っています。お客様の“こういう加工がしたい”という声に応じ、再研削やコーティングなどを施した一品一様の切削工具をお届けするのです」
と専務取締役・村上香氏は言う。
“再生”と言っても、元の形に戻すばかりではない。エンドミルとして使えなくなった工具を面取りカッターにするなど、別の形に生まれ変わらせることも可能だ。使用限度を超えた工具は廃材として回収、スクラップ代は顧客が別の工具を購入する際の費用に充当される。
「新規開発から再研削・再生、そして廃材回収まで、切削工具に関するあらゆるオーダーにワンストップで対応するのが強みです」
同社が1日で対応できる切削工具の数は5000本以上と、国内トップクラスの規模を誇る。
【将来の方向性】
切削加工現場を詳細に把握しなければ
ベストの一品は提供できない
切削加工の対象とする素材は高硬度のものもあれば、熱の影響を受けやすいものもあり様々だ。精度や手法も各現場で異なる。それらに合わせ、切削工具も柔軟に対応させなければならない。
「刃に素材をあてた時の刃の温度や膨張具合、それに削りカスである切子の飛び方…すべて把握しないと、ベストの一品は提案できません」
こう語るのは営業を担当する営業推進課係長・山成健一氏だ。
「月に工具5本から500~1000本まで、お客様の依頼の規模は様々。しかしどんな小ロットでも、必要であれば現場に飛び、状況を直接確認します。というのも、製造現場で学べることが多いからです。それらの気づきが、次の工具開発・再生のヒントになるケースも珍しくありません」
同社は5年前、テクニカルラボを開設。これまでのノウハウや営業現場で拾ったヒントを集約し、次の展開につなげる環境づくりにも余念がない。
「さらに進化した工具を開発していきたい。そして国内はもちろん、東南アジアを中心とする海外市場へ進出したいと考えています。“切削工具は、グリーンツールに頼めば間違いない”というお客様からの信頼を基盤に、着実に成長していきたいですね」(村上氏)
【働き方改革】
全員が知見を共有し、カバーし合えるよう
“多能工化”を推進
同社では女性の技術者が大勢活躍している。ここ5年で、その数は20名以上に増加した。切削工具の研削やコーティングは繊細であり、これらの作業を得意とする人なら能力が発揮できる、ということもあるかもしれない。
そんな状況で同社が力を入れるのは“多能工化”だ。「この加工は、あの人しかできない」といった属人的ノウハウに頼るのではなく、全員で共有したい。誰がどの作業をやっても質の高い製品が生み出せるようにするための“多能工化”だ。
「繊細な作業だからこそノウハウの共有は難しい面もありますが、一つひとつ実践していきたい。知見の共有が当たり前になれば、例えば新人の育成も断然やりやすくなります」(村上氏)
並行して、評価制度の改善にも着手。従業員には黙々と積み上げるタイプの人もいれば、自己アピールが得意な人もいる。職種的に目立ちやすさの差もある。しかしこれらの要因に評価が左右されてしまっては、ノウハウを共有しようという意欲もしぼんでしまう。多能工化の推進のためにも、公正でわかりやすい評価制度は欠かせない。
「就職とは従業員とその家族までまるごと面倒を見る、ということ。せっかく入社してもらったなら、長く続けてほしい。従業員に“長く働きたい”と感じてもらうためにも、多能工化と評価制度の整備は大事です」
と村上氏は言い切る。
社長や常務など経営陣が1日1回は工場内を回り、従業員に声をかける。これもここ数年、意識して取り組んでいることだ。最初は従業員に驚かれたが、今では気さくに声をかけてくる者も増え、現場での気づきがすぐ共有できるようになった。こうした風通しの良さも、同社の成長を支えているのかもしれない。