備前発条は創業58年、バネの製造からスタートした自動車部品の製造企業です。本社と九州、タイに拠点があり、売上の40%をバネ技術を基に開発した自社製品が占めています。ヘッドレスト、アームレスト、オットマン等、主に自動車のシート周りの部品を開発しています。また、同社はプレスから溶接、組立、塗装まで一貫生産でき、自社開発品と合わせ、大手自動車メーカーとの取引拡大も実現してきました。
今後はバネロック機工をコアとした開発品を他業種へも展開していく計画です。
協奏の精神のもと、一人ひとりが輝き「挑戦をやめないプロ」集団を目指し、働き方改革を推進しています。
【事業の現在】
人々を感動させるばね技術を独自開発
自動車用シートの一部であるヘッドレストやアームレスト、オットマン(足置き)。自動車の快適性を上げ、安定した運転操作姿勢を保つのに重要な役割を果たすこれらのパーツを開発・製造しているのが備前発条だ。不要時に収納できるヘッドレストや、無段階での位置調整が可能なアームレストやオットマンなど、高度化する要望に同社は独自の技術で応えてきた。
代表取締役社長の山根教代氏は言う。
「創業者である祖父が、ばねでのロック機能に着眼し、動作・位置保持させる“ばねロック機構”を考案しました。ばねロック機構は時代とともに発展しながら、今も製品の基盤を成しています。私たちはばねを出発点とした当社のコア技術を、新しい世界へ拡げたいのです」
創業以来、同社は「独自開発」に力を入れてきた。15年前からは父である山根孟士会長が「開発部」を発足させ、技術開発を継続。特許申請も積極的に行ってきた。
「ばねはものづくりのベース技術の一つで、ばねを基にした仕組みは様々な分野で活用されています。自動車シートで培った技術を横展開すれば、新たな市場が開けるでしょう。“ばね発感動”をスローガンに開発提案型メーカーへ成長するのが、当社のビジョンです」
【将来の方向性】
医療・インテリアなど新たな分野を開拓
新たな市場として見据えるのは2つ。医療分野とインテリア分野だ。
「両分野ともばね技術を要する製品がたくさんあります。具体的な動きも始まっていて、インテリア分野の顧客から試作品の依頼を頂いたり、介護用椅子メーカーとの協業を模索しています。」
一方、既存の自動車分野も疎かにはしない。シートメーカーに同社エンジニアを派遣し、シート設計の初期段階から加わるなど、今まで以上に関係を深める。
また同社はタイにも工場を持つ。この拠点を、タイに進出する日本や海外の企業との接点づくりに活用し、グローバルシートメーカーから受注するなどの成果も生み出しつつある。
「私たちの強みが活かせる開発とは何か、固定観念を捨て動いていきたい。そのためにも、多様な人材が活躍できる場づくりが大事です」
200名弱の従業員のうち、女性は60名程度。中国・インドネシアを中心とする海外人材は約50名に及ぶ。その半数近くは専門的な技術を持つ高度人材だ。また70歳を越えても元気に活躍するシニアもいる。さらに人材の多様化を促し、様々な知恵・視点・経験を取り込んでいこうとしている。
【働き方改革】
外国人・女性・シニア・障がい者…多様な人材が活躍できる場に
「シニア、外国人、女性、障がいを持つ方々。一人ひとりが支障なく活躍できるよう負荷を軽減したり、ライフイベントがあってもキャリアを継続できる仕組みを整えていきます」
と語るのは、企画室長付の藤井健太郎氏。英語・インドネシア語が堪能な氏は、外国人労働者にとって心強い存在だ。氏はロボット導入やコミュニケーション活性化など、多様なテーマに取り組む。
「2018年には、人との協業が可能なロボットを投入しました。2019年も塗装工程にマテハンロボットを配置。重いものを持つ工程が楽になるため、体力的に不安のある人でもラインで活躍できるようになりました。ロボットにより、負荷軽減と品質担保の両面が改善されています」
同社には、聴覚障がいを持つ社員もいる。そこで、アラートをランプにするなど視覚的に認知できる工夫を重ね、その社員が安全かつスムーズに働けるようにした。これらは、班長を中心に現場のみんなで考えたことだ。
また外国人労働者にも意欲的かつ気持ちよく働いてもらうための配慮も怠らない。朝礼・夕礼では必ず外国人労働者を含めて情報を共有するようにしているし、指導する場合も一方的にならず、1対1で話し合うよう心がける。技能実習生に寸志を支給など待遇面の充実も図っており、日本語検定といった資格を持つ者には資格手当も付与する予定だ。
「外国人・日本人の区別なく楽しく働いてほしいし、私生活も大事にしてほしい。そのためにいろんな制度を改善中で、産休や育休の制度も整備しました。出産祝の一時金を増額したり、男性でも育児休暇を取れるようにしたり。また残業を極力減らし、しないといけない場合でも1日2時間以内に収めるようにしています」
と笑う山根氏。ばね技術をベースに、新たな世界へ羽ばたくための体制は、着実に整いつつある。