享栄エンジニアリングは自動車、航空機、産業機械のお客様からの要望にあわせて、仕様構想から設計、加工・組立、据付・アフターサービスまでの一連のプロセスを担っています。岡山に本社と工場を構えるほか、名古屋と九州に営業所があり、関連会社や協力会社はフィリピンやインドネシア、中国、韓国などグローバルで事業展開をしています。
【事業の現在】
厳しい品質を要求される分野で一品一葉のプロダクトを提供してきた
自動車、航空機という最先端の技術を求められる2つの業界で、存在感を放つのが享栄エンジニアリングだ。同社はもともと、自動車ボデー・ドアの製造設備を提供するメーカーとしてスタート。完成車メーカーから求められるハードルの高いオーダーに、知恵と努力を重ねることで応えてきた。培った技術と実績を、同じく品質について厳しい眼を持つ航空機業界へ展開。自動車分野と航空機分野が事業の二大柱となり、業績は安定している。
代表取締役社長・本多美奈子氏は語る。
「当社の提案は、お客様の構想や仕様をしっかりお聞きするところから始まります。そして構想に沿った“一品一葉”のライン・設備を製作し、据付やアフターサービスまで行うのです。自動化が進む自動車製造の現場では、最先端の技術をベースとした提案が常に求められます。そうした声にも粘り強く対応してきたことが、今日につながっています」
同社は大半の案件について、自動車・航空機メーカーと直接取引を行う。中間に商社などを挟まず、顧客の意向をダイレクトにキャッチできるため、ぶれないプロダクトが提案できる。顧客の声から、新たな提案のヒントを得ることもある。この点も同社の強みとなっているようだ。
【将来の方向性】
受注生産型ではない、自社仕様のオリジナル製品を開発したい
着実な業績を上げる同社だが、本多氏はあぐらをかくことなく未来を見据える。
「自動車で言えば、軽量化のため鉄の部品を樹脂に置き換えるなど、新たな動きが進行中です。どんな事態に直面しても揺るがないメーカーとなるため、業績が堅調に推移する時こそ、次の一歩を踏み出すべきです」
最近、大手自動車メーカーの依頼で、生産設備の製作に携わった。「生産方式を刷新したい」という顧客の重要な意図を満たすのは決して容易ではなかったが、何とか完成させた。するとその製品が高く評価され、顧客から「ものづくり活動賞」の表彰を受けた。
「たくさんあるお客様の取引先の中から当社が表彰され、全社員の自信につながりました。自分たちには確かな技術力がある、と社員のモチベーションが上がっています」
これまで同社が携わってきた製作は、いずれも顧客の要望があってスタートする“受注生産”型だ。これらとは異なり、自社の意思で仕様や販売戦略を策定できるオリジナル製品を第3の柱にしたい、ともにらむ。
「過去にもオリジナル製品を開発した実績があります。蓄積した技術を生かし、時代の要請に応える製品・サービスを社会に創出したい」
カギを握るのは、従来の常識や分野の枠にとらわれない発想が、社員の中から生まれるかどうかだ。
【働き方改革】
“健康”をテーマに、垣根を超えて議論し合える環境を醸成する
1947年創業の同社は現在、70年を過ぎたところだ。そこで約30年後を見据え「100年企業を目指そう」と、社員全体でビジョンの共有を始めている。
「3年先、5年先という短期のスパンではなく、30年という時間軸で捉えた時、自分たちはどうありたいか。時勢に左右されない強さをどうやって身につけるか。そんなことを考え、形にしていきたいんです」
新しく委員会活動もスタートさせたいと構想する。部門を横断し、キャリアや属性も異なる委員を選定。未来につながるテーマについて意見を出し合い、活動を始めようというものだ。
「テーマは顧客満足向上や生産性アップ、品質、あるいは健康づくりなど、何でもいい。業務に直結しない話でもいいので、まずは業務や固定観念にとらわれず、気軽に言い合える風土をつくろうと」
オブザーバー的な立場で委員会活動をサポートする総務部長・小坂泰三氏は、
「技術伝承や業務効率化、ゆとり時間の創出など、当社には取り組みたい課題がたくさんあります。委員会が突破口となって、そうした課題についても議論しやすい雰囲気が生まれると、会社としてより良い方向に進むでしょう」
と期待を寄せる。
オンラインによる遠隔のお客様との打合せや社内ミーティングの機会も増えた。これにより、ビジネスはもっと効率化できるのではないか、商談や会議だけでなく施工の段階でもオンラインで済むプロセスがあるのではないか、と社員みんなが気づき始めた。そうすればコスト・時間の劇的な効率化が可能になり、それは待遇改善やゆとりとして社員に還元されることになる。
明確なビジョンを共有し、前向きに歩んでいく会社にしたい。本多氏はそのための環境整備に余念がない。